クリニック開業資金の調達で銀行から様々な条件を出されたら?
クリニック開業資金の調達で銀行から様々な条件を出されたら?
クリニックを開業するときは、その資金を自己資金から出すことも大切ですが、基本的には銀行から開業資金の融資を受けることが一般的です。銀行から融資を受ける場合には、さまざまな条件があり、銀行や銀行の担当者によって異なります。
このご質問は、当社にてクリニック開業支援をさせていただいていた医師からのものです。
医師が自ら金利の安い銀行を探してこられて、クリニックの内装工事などの準備が進んでいる中で、その銀行と融資契約なさろうとしていた矢先の出来事でした。当初は一括で融資が受けられる予定でしたが、後になって銀行から「融資は2回に分け、残りの半分はクリニックが開業してから」という条件変更がありました。
一度は銀行融資の許可が出たのに、後からさまざまな条件を付けられて困ったという、過去にあったエピソードをご紹介しますので、これからクリニックを開業する医師が、銀行とどのように付き合っていったらいいのか、参考になさってください。
金利の安い地方銀行に融資を依頼
銀行融資は、クリニックを開業するという証明となる書類を提出して、融資の可否を決めます。
埼玉県で開業を予定されている先生が、とある地方銀行に約5,000万円の融資をお願いしました。その契約の場面に、当社のコンサルタントも立ち会いました。
そのときは、順当に契約が進み、「融資が出る」とのことだったので、コンサルタントがアドバイスしながら契約書などの必要書類をまとめました。また、契約書類に併せて、テナント契約書や火災保険の申込書、約5,000万円をどのように使用するのか、返済をどのように計画しているのかをまとめた経営計画などといった書類を提出して、審査をお願いしました。
銀行担当者の話しの流れからすると、銀行審査はすんなり通り、融資金額が一括で支払われるはずでした。
銀行から突然の融資の条件変更
その後、銀行担当者からの連絡によると、融資の許可は出たのですが、申請した金額を一括ではなく、「2回に分割で融資する。2回目は開業後に融資する。」との条件が出されました。つまり、「運転資金は開業後に融資する」というものでした。
また、テナント契約の敷金や礼金、仲介手数料などの支払いをすでにしているのであれば、追加の資料として「その領収書の写しなどの支払った証拠となる資料も付けてもらいたい」とのことでした。
その不動産契約の代金などは、自己資金から支払ったのですが、「それらを支払った残りの自己資金を銀行に振り込まなければ、融資を実行できない」とのことでした。
おそらくですが、この銀行は担当者だけでなく、その上司もクリニック開業のための融資をした経験が少なかったのでしょう。
クリニックの開業準備として、備品やインテリアの購入、電子カルテの代金支払いなどが控えているので、手持ちの資金だけですべてを準備していくためには、資金の残金が心配です。病院はすでに退職した後なので、お給料も入ってきません。
仮に、銀行に対して「条件と違うので一括で融資してもらいたい」と強く出たら、銀行からの融資を全面的に断られてしまう可能性もあります。そうなると、すでに工事を進めてしまっている先生としても困ります。
こういった場合、どのように考え、対応したら良いのでしょうか?
一般的な銀行は融資の条件が変わることが多い
今回、先生からのご相談のように、事前に銀行と融資の話しを進めていても、いざ契約の段階で融資の条件が変えられてしまう事があります。一般的な銀行融資の場合は、このような対応をしてくることが多いです。
融資金額が振り込まれるまで分からない
融資の保証をしてくれる会社などを使わずに、銀行自身の責任で融資を行うものをプロパー融資と言います。この場合には途中で条件が変わったり、加わったりする場合が良くあります。今回の銀行担当者は、クリニックの開業時に融資をした経験が少なかったために、都度自分の上司に相談していた様です。すると、未確認事項が出て来る度に上司に相談することで、追加の融資条件が加わっていったものと思われます。
このことから、一般銀行に融資を依頼した場合は、「必要な資金が振り込まれるまで、本当に予定通り融資されるのか分からない」というのが実状です。
低金利は営業のためのリップサービス
銀行は、お金を貸してその利子で儲けを出すことが基本です。しかも、元本を返済してもらえなければいけません。そのために、優良な融資先を欲しがっています。
優良な融資先を見つけるために、営業のためのリップサービスとして、低金利での融資を謳い文句にしている銀行が多くあります。
銀行の担当者に言っても手続きが変更されることは無い
このように融資の条件として、「これでもか」とさまざまな要求があり、しかも融資を全額ではなく2回に分けて、クリニックが開院してから残りの融資を支払うという条件を突き付けられる事が多く有ります。
この怒りを銀行の担当者にぶつけたとしても、銀行の従業員である担当者は謝罪してくるだけで、何もすることができません。銀行としては、突き付けた条件を先生が呑んでくれるのであれば融資をしてくれる可能性が高いですし、条件が呑めないのであれば融資を断ってくるだけです。
銀行からの条件変更にどのように対応したらいいのか?
今回の様なケースでは、金利が格安であったことを良しとして、条件をすべて受け入れて、スムーズに開業ができるための資金繰りを考えることが得策です。
銀行から資金を借りないと開業ができないので、銀行に対して腹を立てても仕方がありません。
銀行としては、「このクリニックは本当に開業して、きちんと返済してくれるのだろうか?」と心配しているのです。全額支払って後から「クリニックが開業出来ませんでした」となってしまったら、融資を決定した銀行の担当者や上司は、出世の道が閉ざされてしまうかもしれません。
このように、銀行としても融資をすることに慎重になっています。今のご時世では、なおさらのことです。
開業後の健全経営を考えたら、金利の安いところから借りる方が安心出来ますので、銀行の条件に従う方が得策です。
先生にもそのようにお伝えし、ご納得いただいて銀行の条件を呑んでいただきました。そして、銀行融資が出るまでの資金繰りを検討して、融資がおりるまでの間はなるべく支払いを伸ばすように交渉して開業準備を進めることにしました。
銀行融資が条件通りに出るためには、どうしたら良いのか?
銀行によっては、クリニック開業のための金融商品を扱っているところがあります。例えば、みずほ銀行であれば、「みずほクリニックアシスト」という商品があります。
2023年11月現在であれば、融資金額が有担保で最大1億円が融資されます。また、当社の経験上、契約から融資が出るまでのプロセスが明確であり、途中で手続きや融資条件が変わることもありません。
安心して融資を受けたい先生には、このようなクリニック開業を専門とする金融商品を利用することをおすすめします。
今回は、クリニックを開業するために銀行融資で、銀行から条件変更を言われてしまったときの考え方や対応方法についてご紹介いたしました。
当然ながら、金利の安い銀行で融資を受けた方が、その分だけ返済する金額を低く抑えられるので、クリニックが開業した後の安定経営につながります。ところが、金利が低い代わりに、クリニックの開業準備のための資金がタイミングよく調達できないこともあります。
このエピソードのように、融資の許可が出た銀行であったとしても、融資が2回に分けられてしまい、準備のための資金調達がタイミングよくできないこともあります。
地方銀行などから低金利で融資をしてもらう場合には、こういったことも想定しておいてください。
銀行からの資金調達で、スムーズに融資をしてもらうためにはノウハウが必要です。当社は、資金調達についてもさまざまな経験やノウハウがあります。失敗の少ないクリニックを開業するためにも、ぜひ当社のクリニック開業コンサルティングをご利用ください。