クリニックの内装工事は坪単価の安さで選ぶと失敗する理由

クリニックを開業しようとするときに、テナント物件の契約をしたら、同時にクリニックの内装工事の計画を行います。
内装工事は、クリニック開業でかかる初期費用の中でも大きなものの一つです。そのため、なるべく安く抑えたいということが、多くの先生が希望することだと思います。
ところが、内装工事の業者選びで、坪単価の安さだけで選ぶと、後で大きな後悔をして、追加工事が必要となる場合もあります。
ここでは内装工事の業者を選ぶときに、何を基準として選ぶべきなのかをご説明いたします。
内装工事の坪単価とは?

クリニックの内装工事の見積もりを取るときに、坪単価という言葉を聞くことがあると思います。坪単価とは、1坪当たりの内装工事費のことで、内装工事費をテナントの坪数で割った金額が坪単価です。単位は、「円/坪」です。
例えば、テナントの坪数が30坪で、内装工事費が2,700万円だったとすると、「2,700万円/30坪=90万円/坪」となります。
内装工事費の坪単価は、テナントの広さと工事費によって異なります。例えば、60坪の広さで、内装工事費が4,200万円だったとすると、坪単価は70万円/坪となります。
この2つの金額を比較すると、前者の「坪単価90万円/坪」の方が高額のように思えてきます。それに対して後者では坪単価が70万円/坪なので安いように思えますが、広い面積の工事だからこのような金額になってくるのです。
内装工事業者の選定をするときに、できるだけ工事費の安いところにお願いしたいと思うのですが、工事費の総額はどのような仕様の内装工事をするのかによって金額が変わってきます。結局のところ、内装工事で作り上げるものの内容によって坪単価が変わってくるのです。
なぜ内装工事を坪単価の安さだけで選ぶと失敗するのか?

先生が内装工事の業者を決めるためのポイントは、次の3つであることが多いです。
- ・ 坪単価が安い
- ・ 仕上がりのイメージパースを見せてもらい、雰囲気が良さそう
- ・ 知り合いが紹介してくれた業者
工事業者としては、「当社は坪単価が安いです」とPRすることで、たくさんの受注が得られやすくなります。先生としては、安く仕上げてもらい、なおかつ仕上がりのイメージパースを見せてもらい、「雰囲気が良さそうだ」ということで、業者を選ぶことが多いです。
しかし、実際に工事をするとなると、業者も利益を出す必要があるため、どこかで費用を抑える工夫をしないといけません。では、雰囲気の良い内装の仕上がりを意識しながら、安い工事費用で請負をしても黒字を出すためには、どこをコスト削減するのでしょうか?
それは、普段あまり見えない場所です。例えば、次のような設備関係で手間を省いたり安い製品を使用する場合があります。ただし、これらのことは、いわゆる手抜き工事ではありません。
- ・ 電源やLNAコンセントの数を減らす。もしくはLANケープルの配線をしないで無線LANにする
- ・ 最新の製品でない、型落ちの古い空調機器や電気設備を取り付ける
- ・ 壁の中に入れるべき遮音材料などを省いて施工してしまう
このような工事を行ったら、確かに初期費用が安く済みますが、使い勝手が悪いばかりでなく患者さんの診療効率が非常に悪くなってしまう可能性があります。
クリニックの内装工事業者はどのような基準で選べば良いのか?

クリニックの内装工事業者を選ぶときに、「どのような基準で選ぶべきか?」ということですが、なかなか一概には言えません。アドバイスできるとしたら、クリニックの内装工事を専門として数多く手掛けてきた業者に依頼することをおすすめします。
クリニックの内装工事を専門として実績が多い業者であれば、必要な設備や機能をキッチリと入れ込んで計画するので、坪単価は少し高目になってしまうかもしれませんが、先生の診療がスムーズに行え、生産性の高いクリニックになり、利益が出やすくなります。開業後のトラブルも圧倒的に少なくなります。そうすることで初期費用は多少高目になるかもしれませんが、後で余計なコストがかからずに、利益が出やすいクリニックを作ることができます。
例えば、弊社が内装工事を計画する際には、テナントの契約をする前に事前調査を入念に行いますが、後で大きな追加工事が必要となることを見抜き、何百万円もの出費をしなくて済んだ事例もたくさんあります。一般的な内装工事業者であればテナント契約をした後に、設計計画に取り掛かるのですが、クリニックが入居することによって、建物全体の防災計画が大変厳しくなるような消防法に引っかかってしまうような物件もあります。クリニックなどは消防法でいうと『特定用』という分類となり、建物全体に追加の防災工事が必要となることもあるのです。
クリニックの内装ができて、消防署の検査を受けた時にしたときに、「このクリニックは法律に引っかかるので使用できせん」と言われてしまったら大変なことになるのです。
どのような内装にすると良いのか?

クリニックの内装工事には、いくつかのポイントがあります。もちろん、患者さんを中心とした業務効率の良い内装工事をすべきなのですが、テナント物件の形状や給排水管の位置によって制約もあります。それらを考慮して内装設計を行います。
- ・ 天井裏や壁の中など目に見えない部分の配管などの工事を丁寧に行う
- ・ 電源コンセントやLANケーブルなど院内ネットワークの構築に必要な設備を充実させる
- ・ 待合室を広めに取り、職員の休憩室などの二次的な機能を縮小する
天井裏や壁の中など目に見えない部分の配管などの工事を丁寧に行う

天井裏や壁の中の配管など目に見えない部分の工事を丁寧に行うことは、クリニックを長く快適に使用するためには最も必要な工事のポイントです。例えば、工事費を安く抑えるために、壁の中の配管工事が適切に行われないケースもあります。もし天井裏や壁の中でトラブルが発生すると、天井や壁を壊して工事をやり直すことになりますが、高額な追加の工事費用がかかってしまいます。
そのような工事のやり直しの期間は、クリニックの診療も出来なくなってしまうので、収益も下がってしまいます。
電源コンセントやLANケーブルなど院内ネットワークの構築に必要な設備を充実させる

クリニックでは電子カルテを使用することが当たり前となりましたが、X線やエコーの画像、心電図や各種の検査データーなども一元管理するための、院内ネットワークの構築は必須のものとなっています。こうしたネットワークの構築に必要なLANケーブルの配管や、電源がダウンしないようにするための単独回線としての電源コンセントの配線などは、相当に費用の嵩むものです。工事費の坪単価を安く抑えるために、各部屋のLAN配線が少なくすることで、院内の情報ネットワークが機能しなくなってしまう恐れがあります。
当社がクリニックの内装設計をするときは、これからの医療DX化を考慮してLANケーブルの配線や、単独回線の電源コンセントを十分に設けるのですが、坪単価の安い業者は「無線LANだけで十分に機能する」と考えて、後で困ってしまうことがあるのです。無線LANはとても便利だと思いますが、ルーターから離れると通信が不安定になったり、経年劣化で通信速度が落ちてくることもあり、またセキュリティの関係からも、あまりおすすめできません。
待合室を広めに取り、職員の休憩室などの二次的な機能を縮小する

クリニックの内装設計を多く手掛ける設計士であれば、スタッフの休憩室を狭くしてでも患者さんの待合室を広めに取るように勧められると思います。患者さんが来院されて、診療を受けるまでの待ち時間を、気持ちよく過ごしてもらうためです。
クリニックの内装設計に慣れていない設計士だと、先生のご要望を優先して、それをすべて叶えるクリニックを設計したところ、患者さんの待合室や診療に必要なスペースが狭くなってしまい、診療がしにくい患者さんからも不人気なクリニックになってしまうこともあります。
先生は、クリニックの設計について知識の無い方がほとんどだと思います。使い勝手の良いクリニックの内装設計については、実績の多い設計士に相談した方が、経営が安定しやすい良いクリニックになります。
内装工事の詳細は、「クリニック内装工事の設計・施工で失敗しないためのポイント」をご参照ください。
また、ここでご紹介したものは、あくまでも一般的なことですから、先生の診療科目や規模などによっても求められる内装は違ってきます。
テナントの場所選びも坪単価で選ぶと失敗する

坪単価というのは内装工事だけでなく、テナントの家賃にも坪単価があります。家賃の坪単価の計算方法は、内装工事の坪単価と同様です。月々の家賃をテナントの坪数で割った金額になります。
坪単価の高いテナントの方が低リスク
テナント物件を選ぶときに、やはり坪単価の安いテナントを探す先生が多いのですが、実は経営リスクを下げるためには、比較的坪単価の高いところを選んだ方が良いのです。
その理由はこうです。
坪単価の高い物件は、駅前などの人通りが多い場所です。そういった場所は、場所の持つ事業性のポテンシャルが高いので土地代も高くなり、そこに立つ建物の家賃の坪単価も高くなるのです。患者さんからするとアクセスが良い場所ですから、患者さんもたくさん来やすいのです。患者さんがたくさん来るクリニックは、もちろん経営が安定しやすくなります。
例えば、コンビニの売り上げを見るとよくわかると思います。コンビニは全国どこでも同じ商品と同じサービスで営業していますので、クリニックの保険診療と似たところがあります。
ところが、コンビニの店舗の立地によっては売上が10倍以上も違うところがザラにあります。
コンビニは人通りの多い場所で開店すればお店の前を通る人の数に比例して売上が上がります。人通りの多い場所というのはもちろん家賃の坪単価も高いのですが、お客さんが多く来てくれるので安定経営ができるのです。
クリニックも同じです。低リスク開業を目指すクリニックは、たくさんの人が通り、認知されやすい場所で開業することが安定経営の基本です。
その反対に、坪単価の安いテナントでは、人通りが少ない場所が多いです。坪単価の安いテナントを見つけた先生が、「家賃が安くなったから広いところを借りた」ということで、患者さんがほとんど来なくて、倒産してしまったクリニックもあります。
「坪単価が高いと、テナント料が高くなって、経営が苦しくなるのではないか?」と思われるかもしれませんが、実は坪単価が高くても、クリニックの坪数が小さなテナントを選ぶことで、家賃の総額を割安に抑えることが可能です。
高い坪単価でも毎月の家賃を割安にする方法
先生によっては、いろいろな診療ができた方が良いと考えて、広めのテナントを借りて、たくさんの医療機器を導入しようとする先生もいます。「小さなクリニックだと、たくさんの医療機器を導入できないから、患者さんが来ないのではないか?」と思われるようです。
当社のコンサルティング支援をしてきた経験から言えることですが、最初から高額な医療機器を数多く導入するクリニックは経営が危なくなることが多いのです。
まだ患者さんがそれほど来ていないときから高額な医療機器を沢山導入しても、あまり利用されずにムダになることも多いのです。
最初は必要最小限の医療機器だけで開業し、必要性を感じてから導入を検討されることをおすすめします。そのようなクリニックが黒字化しやすいのはいうまでもありません。
以上、クリニックの内装工事を坪単価の安さだけで選ぶと失敗する理由から、どのように業者を選ぶべきか、また開業場所のテナントも坪単価だけで選ぶと失敗することをお伝えしました。
これからクリニックを開業する先生は、ぜひ初期費用の安さだけで内装工事業者を選ばないようにしていただきたいと思います。ライフサイクルコストという言葉もあるように、初期費用だけでなく生涯でかかってくる費用やメリットをも考慮して、内装工事の設計士や施工会社を検討することが大切です。
当社のクリニック開業コンサルティングでは、このような内装工事の設計や施工も含んでトータルでサポートをいたします。失敗しないクリニック開業を目指される先生は、ぜひ当社のクリニック開業コンサルティングをご検討ください。
まずは、無料のクリニック開業Webセミナー&個別相談会にてご相談ください。セミナーでは、リスクが低く先生の手取り収入を増やせるクリニックの開業方法「ミニマム開業」をご紹介させていただきます。
当社へのご相談のタイミングは、「そろそろ開業したい」と思われたときです。開業準備には少なくとも1年ほどの期間を要します。開業を思い立ったら是非当社にご相談ください。