開業時に気をつけたい詐欺まがいの営業電話

携帯電話の普及につれて、自宅に固定電話を置く世帯が減少していきました。
今では自宅に固定電話を置いているのは高齢者世帯が多いと思います。そのためか、高齢者世帯は様々な詐欺まがいの電話営業の格好の標的となっています。
勤務医の先生方もご自宅に固定電話を置かずに、スマホだけで日常の連絡を済ませている場合がほとんどだと思います。ところがクリニックを新規開院する場合には、固定電話を置いてその代表番号を多くの人に知らせることになります。設置された固定電話は、もちろん患者さんや関係会社からの連絡を受けるための代表番号ですが、ここに詐欺まがいの営業電話が、毎日のようにたくさんかかってきますので、これから開業する先生はよく気をつけてください
ここからは、よく騙されそうになる代表的な詐欺まがいの営業電話について解説します。
NTTの料金が安くなると言う営業電話

一番多いのがこの営業電話です。クリニックの電話回線はNTTの光回線とOCNのプロバイダーに契約して院内ネットワークを構築することが一般的です。
最近では、オンライン資格確認や電子処方箋なども導入が進み、院内のネットワークがより複雑になっています。
そこにNTTの代理店という触れ込みで、「基本料金が安くなるので契約先を変更すれば大変お得です。」と言う営業電話がしつこくかかってきます。きっぱりと断わってもしつこく何度もかかってきます。
確かに基本料金が数百円ほど安くはなるのですが、その代わりにそれまで組み上げた院内ネットワークが全てクリアされて使い物にならなくなってしまいます。それを元の状態に戻すためには大変なコストがかかってしまいます。
営業電話は、主にコールセンターを専門とする企業に外注されてかかってきますので、ノルマがあったり成果報酬があったりで、「契約さえできれば、先生が苦労しようとも後のことは関係がない」と言うようなシステムになっています。
NTTの料金が安くなると言う営業電話は、固定電話のある家庭や一般の会社・店舗などにも度々かかってきますので、経験している人も多いのですが、クリニックを開業して初めて固定電話を置く先生は、良い話だと思い込んで契約してしまう場合があります。
固定電話の通話は従来通り使えますが、院内のネットワークは全てダメになってしまいますので気をつけてください。
断ることが苦手な方は、「そういったシステムはすべてお任せしている会社があるので、そちらに電話してください。」と言えば良いです。
求人サイトが1ヶ月間無料で利用できるという営業電話

クリニックに限らず、今はどこの会社でも人手が足りなくて困っています。社員を募集する会社は、リクルート社をはじめとする色々な求人媒体に大金を払って、また採用コンサルタントに依頼するなどして従業員の募集をするのですが、なかなか思うような人材の採用が難しいのが現実です。
そんな時に、「1ヶ月間は無料で求人サイトに広告が出せて、効果がなければ解約もできます。」と言う営業電話がかかってくることがあります。そこで、無料であれば損はないのでとりあえずやってみようかということになり、すぐに申し込んでしまいます。
そこで契約書もよく見ないで契約してしまう場合が多いのですが、契約書に記載された解約条項には、たいてい「期日までに指定の用紙で解約の手続きを行うことで無料で解約できますが、手続きを行わなかった場合には、自動的に料金のかかる広告契約に移行する」という文言が記載されています。
そうしたことは契約の前に電話でも説明を受けるのですが、期日前に解約をすれば良いということに納得して契約してしまいます。
そして無料掲載期間の1ヶ月が過ぎようとする頃、解約しようと思って契約先の会社に連絡をすると「解約の用紙をFAXで送りますから、そこに解約の意向を記載してFAXで送り返してくだい。」と言われて解約用紙が送られてくるのを待つのですが、業務の終了時間の5分ほど前に用紙が送られてきます、業務終了間際なので、普通は解約の意向を伝えているので翌朝にFAXしても大丈夫だろうと判断してしまいます。
その結果、解約期日に1日遅れたということを理由にして、高額な広告料の支払いを請求してきます。「そんなやり方はおかしいと抗議しても無駄で、契約の時に電話で了解を得たことも全て録音しているので裁判で争っても勝てませんよ。」と態度を一変させて、請求書を送りつけて広告代金の支払いを要求してきます。
支払いを拒否しているとどんどん電話をかけてきて、しまいには立て続けにひっきりなしに電話をかけてきて、会社やクリニックの業務を妨害するという嫌がらせをしてきます。
業務妨害で警察に連絡してもどうにもなりません。広告代金を支払うかあくまでもご自身で嫌がらせに対抗するかの選択しかなくなってしまいます。
もう1つの解決方法としては、弁護士に相談して広告会社に内容証明を送ってもらい、嫌がらせをやめさせる方法という方法もあります。上大岡法律事務所のホームページ「無料求人広告の詐欺!?無料求人広告のトラブルにご注意」をご参照ください。
法律事務所に相談すると、5~10万円程度で「あなたの求人広告は詐欺ですから今後一切支払いはできません」というよう内容証明を送ってくれますので、多少の費用はかかりますが現実的な解決方法かもしれません。
Googleマップ広告で集患できるという営業電話

どこかに行こうと思った時に、Googleマップで目的地を調べるのは日常となっています。
特に飲食店などを調べようとした場合は便利で、お店の評価が確認でき、お店の中の雰囲気やメニューなどを紹介する写真も豊富に掲載されていて、一定の広告効果を生んでいます。
そのようなことで、15年ほど前からGoogleマップの登録を代行してくれる業者や、広告を取り扱う代理店も雨後の筍のようにたくさん増えてきました。
そうなると過当競争になりますので、新規の顧客を得ることが大変になってきます。そのため広告を扱う業者さんは新規開業の店舗を探して積極的な営業を展開するようになるのですが、中にはよからぬ営業を行う会社も増えてきました。
クリニックが新規開業する際には、職員募集の広告を求人サイトなどに出しますが、それをGoogleマップの業者が見て、新規開業のクリニックが感じている集患の不安につけ入り、「クリニックの内部の写真入れた広告を出すと、より多くの患者さんを獲得することができる」と言って契約を勧誘してきます。
開院間際の忙しい時期で経営に関する不安もあることから、よく考えないで広告の契約を結んでしまうと、次の日に思い直して解約しようとしても、やはり解約条項には「一旦結んだ契約をキャンセルした場合には、高額のキャンセル料が発生する」という詐欺的な記載があって、その支払いを迫ってくることになります。
一旦契約の書面を取り交わすと、たとえすぐにキャンセルの申し出をした場合でも、「会社の決まりなので営業担当者の判断ではどうにもならなりませんので、キャンセル料を支払ってください。」の一点張りとなりしつこい支払い要求の電話攻撃を受ける結果となってしまいます。
電話営業などの契約に関しては、クーリングオフという制度があって8日以内ならば契約の解除が可能なのですが、この制度は家庭にいる主婦や高齢者などを不当な契約から守るための制度なので、残念ながらクリニックのような事業所には適用されません。
クリニックを新規開業する際には、そのほかにも色々な営業電話がかかってきますが、そのほとんどは詐欺まがいの営業なので、クリニックを開業する先生方には、電話でかかってきた営業は全て断ることをお勧めします。