クリニックの資金がなくなって経営難に陥るパターン

クリニックの資金がなくなって経営難に陥るパターン

クリニックが経営難に陥る原因は、多くが患者さんの数が少なくて、経費がまかなえなくなったときです。そうなるとクリニックを運営する資金がなくなっていって、資金繰りが悪化します。

資金がなくなって経営難になるパターンには、次の2つが主なものです。

  • ・開業後に患者さんが増えなくて経営難になる
  • ・突発的な出費で経営難になる

1つ目は、開業直後、早ければ半年ほどで資金難になるケースです。2つ目は、経営が安定しているクリニックであっても突発的な出費で経営難になるケースがあります。この2つのパターンについて解説いたします。

これからクリニックを開業しようとされている先生は、この2つのことを考慮した事業計画を立てることが大切です。もし、リスクの少ない安定経営を目指そうとする堅実な事業計画を立てたいとお考えであれば、当社にご相談ください。

開業後に患者さんが増えなくて経営難になるパターン

開業後に患者さんが増えなくて経営難になるパターン

クリニックを開業したばかりのときは、患者さんの数はとても少ないのですが、少しずつクリニックの運営に慣れて行って、患者さんが増えてきても対応できるように練習していきます。

いきなりたくさんの患者さんが来てしまったら、慣れていない先生やスタッフはパニックになってしまいます。

少しずつ業務に慣れていって、患者さんの満足度も上がっていって、だんだん患者さんが増えていきます。しかし、患者さんがある程度まで増えないと経営は赤字ですから、手持ちの資金を使って赤字を補填していきます。

やがて、患者さんから得られる診療報酬とクリニックでかかる費用が一致してきて損益分岐点を超え、黒字になって借金を返済し安定経営ができるようになります。

これはあくまでも一般的なパターンです。クリニックが黒字になる前に、手持ちの資金をすべて使い果たしてしまったら、クリニックも普通の会社と同じように倒産してしまいます。倒産するクリニックの経営状況を見ていると、赤字になる直接の原因は集患が思ったほどできていないことです。

しかし、患者さんが増えたとしても資金を使い果たしてしまうこともあります。その理由としては、次の2つです。

  • ・テナント代、人件費などの固定費が高すぎたとき
  • ・事業計画が甘く、手持ちの運転資金を十分に用意していなかったとき

テナント代、人件費などの固定費が高くて経営難

テナント代、人件費などの固定費が高くて経営難

クリニック経営にかかる費用には、固定費と変動費に分けられます。固定費とは、患者さんの来院数に関わらず毎月かかる費用のことです。例えば、テナントの家賃やスタッフの人件費、水道光熱費、電子カルテやインターネット回線の使用料などが固定費になります。

変動費とは患者さんの来院数に応じてかかる費用です。例えば、医薬品やディスポの診療材料などの医療消耗品です。患者さんがたくさん来院してきてくれたら、それだけ変動費が増えていきます。変動費は、患者さんを診たら必要となる費用ですので、これが増えても診療報酬で回収できます。

利益は次の式で計算ができます。

利益 = 売上高-変動費-固定費 = 売上高×利益率-固定費

利益を最大化しようとしたら、もちろん、患者さんを1回診たときにかかる費用が低ければ低いほど、利益が多く得られますから、利益率の高さも大事な要素です。しかし、クリニック経営で最も問題となるのは家賃や人件費などの固定費です。固定費は患者さんがゼロでもかかってしまう費用ですから、なるべく少ない方が良いです。

開業しようとしている先生によっては、「あの医療機器を入れたい、この診療もできるようにしたい」ということでクリニックに大きなスペースが必要となり、テナントの家賃が高くなってしまう先生がいます。

地域の人のためにいろいろな診療ができたら良いのですが、新規開業をして患者さんがいないうちから色々な医療機器を揃えて、広いクリニックを借りてしまったら、入ってくる診療報酬よりも出ていく費用が圧倒的に多くなり、資金がすぐに不足してしまいます。開業直後はミニマムに始めて、患者さんのニーズに合わせて医療機器を整えていっても良いわけですから、患者さんの来院が少ない最初のうちは、できる限り医療機器やクリニックのスペースを小さく始めることが大切です。

ミニマム開業とは、家賃や人件費などの固定費をできるだけ小さくして、経営リスクの少ないクリニックを開業し、先生の手取りを大幅に増やすための手法です。ミニマム開業の詳細は「ミニマム開業とは?メリット・デメリット」をご覧ください。

開業コンサルタントによっては、先生に言われるままにクリニックを作って、後の経営のことを考えずに開業を支援する人もいます。開業後の経営のことまで考えてアドバイスしてくれる開業コンサルタントを選ぶべきでしょう。また、ミニマム開業をしたい場合はミニマム開業に強いコンサルタントに相談することが大事です。

事業計画が甘く、運転資金を十分に用意していなくて経営難

事業計画が甘く、運転資金を十分に用意していなくて経営難

クリニックも企業と同様に運転資金が無くなってしまったら倒産ですが、準備した資金の額と患者さんの増え方によって、クリニックがいつ倒産するのか、それとも経営を軌道に乗せて黒字化していくのかを予想することができます。

ここで最も予想しにくいものが患者さんの増え方です。将来の患者さんの数が予想できたら、実際の経営に近い事業計画を立てることができます。事業計画は開業コンサルタントに相談して作成していくことになりますが、患者さんの数の予想は、診療科目と立地に大きく左右されますので、実際の経営に近い予想ができるかどうかは開業コンサルタントの経験によります。

経験の浅い開業コンサルタントに事業計画づくりを依頼すると、先生を喜ばせるために多くの患者さんで賑わい、たくさん儲かる事業計画になることが少なからずあります。ところが、実際に開業すると経営状況がとても厳しいものになってしまうこともよくあります。「開業コンサルタントに事業計画を立ててもらったのに、うまくいかない」と憤る先生もいらっしゃいますが、開業してしまったら後の祭りです。

クリニックの開業資金は、銀行や日本政策金融公庫などの金融機関から融資してもらって始めることが一般的です。資金調達をするためには、金融機関に事業計画を提出しなければなりません。その事業計画は、先ほどご説明したような、たくさん儲かるような内容でないと、借りられる金額が低くなってしまうことがあります。ですので、バラ色の事業計画になりやすいのです。

ですが、実際に経営をしてみたら甘い事業計画の通りにはいきません。コンサルタントの経験不足によって、想定外の突発的な出費が発生し、調達した開業資金が見る見る減っていった事例もあります。

事業計画の良し悪しによって、クリニックを安定経営に持っていけるかどうかが決まりますが、事業計画の良し悪しはコンサルタントの経験によって左右されます。

少しだけですが、事業計画を立てるノウハウをお教えしましょう。当社では、事業計画を立てるときは、資金調達のための事業計画と、現実に即した堅実な経営を意識しての事業計画の2種類を作成します。融資の申し込みには前者の事業計画を使って必要な資金調達をし、クリニックが開業したら後者の事業計画で堅実な運営していくのです。そうすることで、余裕を持って経営ができるようになります。

突発的な出費で経営難になるパターン

突発的な出費で経営難になるパターン

開業前のクリニックで突発的な出費が発生し、資金が目減りしてしまって、開業後に経営難になるケースがあります。また、経営が安定しているクリニックであっても、突発的な出費で経営難になるケースもあります。突発的な出費と言うのは、例えば次のようなケースがあります。

  • ・クリニックの内装工事で大幅な追加工事が必要になった
  • ・クリニックの改装工事が必要になった
  • ・新しい医療機器を導入しないとやっていけなくなった
  • ・電子カルテなどの新しいシステムの導入が必要となった

クリニックの内装工事で大幅な追加工事が必要になった事例

クリニックの内装工事で大幅な追加工事が必要になった事例

当社が開業支援をしていて、事前に察知できたので大きなトラブルになる前に解決できた事例を2つご紹介します。

1つ目は、テナントビルにレントゲンやレーザー装置用の高圧電源が無かった事例です。もしテナントビルと契約してしまった後であれば、高圧電源を設置する費用は、すべて先生持ちになります。場合によっては電源設備の入れ替えも必要になる可能性もあります。

2つ目は、テナントビルの消防用設備が、クリニックに対応していなかった事例です。テナントビルは一般的な消防用設備が設置されていますが、そのテナントビルでクリックを開業することによって建物全体に新たに火災報知器を設置しなくてはならなくなった場合もあります。

消防用設備はクリニックの院内に設置するものもありますが、クリニックが入居するテナントビル全体に設置すべきものもあります。その設備が整っていない場合は、ビル全体の消防用設備の追加工事をたいてい先生が負担しなければなりません。

開業準備中の先生が経験したお粗末な内装工事の見積もりの事例は、「クリニック内装工事の費用と相場は?」をご参照ください。

将来的にクリニックの改装工事が必要になる事例

将来的にクリニックの改装工事が必要になる事例

当社のコンサルティング支援で、大きな出費を食い止めた事例をもう一つご紹介します。それは、内装工事業者を選ぶときに、「工事費の安さで選んだ」というケースです。このケースでは、数年後に大きなリフォーム工事が必要となり、想定以上の出費が出てしまいます。

とある先生からの「現在依頼している開業コンサルタントが信頼できない」とセカンドオピニオンとしてご相談をいただきました。現在契約中の開業コンサルタントが立てた事業計画や、開業コンサルタントの知り合いの内装工事業者からの見積の内容を確認したところ、かなりずさんな内容でした。

工事費用は、確かに安かったので、「どこの費用を削っているのか?」と確認したところ、内部に埋め込まれて見ることができなくなる配管や電気配線などの費用を削っていたのです。

先生には「この見積もり内容のまま工事を進めてしまったら、すぐに不具合が生じて診療機能に大きな障害が出る可能性があります。すると、内装を大幅にやり直さなくてはならないので、多大な費用がかかります。」とアドバイスさせていただきました。

突発的な出費で経営難になりそうなときはすぐに資金調達を

突発的な出費で経営難になりそうなときはすぐに資金調達を

突発的な出費で資金が足りないときは、銀行に事業計画を提出して資金調達します。資金調達をするときは、若干余裕を持って借りておくことが大事です。

また、場合によっては補助金や助成金が出ることもあります。補助金や助成金が出ると、資金の一部を政府や自治体が出してくれるので、クリニックの負担が軽減されます。そういった制度を調べることも大事です。

政府の方針などで、新しいシステムを導入したり、クリニックを改修工事しないといけなかったりする場合には、たいてい補助金や助成金が出ることが多く、また期限までに余裕のあることも多いです。普段からそういった情報を仕入れるための、会合やセミナーの参加、資料集めなどが大事です。そういった情報を知ったら、資金需要を予想し、概算でも良いので導入計画を立てることも大事です。

クリニックの資金がなくなって経営難に陥るパターンと題して、いろいろとノウハウや事例をご紹介いたしました。結局のところ、開業支援を依頼するコンサルタントの力量不足によって、甘い事業計画を立ててしまったり、突発的な出費を予想できなかったりしたことで、経営難に陥っていると思います。

もし、現在開業準備中の先生で、契約中の開業コンサルタントが少し心配になってきたら、ぜひ当社のコンサルタントにご相談ください。

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開業した後に経営難で「失敗した!」となる前に、お早目のご相談をお待ちしています。

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