専門性が高く権威のある医師ほどクリニック経営が難しい理由

クリニック経営は難しい?

ある高名な医師が、勤めていた病院から多くの患者さんを引き連れて、事務長役のスタッフにサポートしてもらいながら開業したものの、なかなか経営状況が好転しないで、借入金の返済も難しい状況が続いているということを聞いたことがあります。その方と同じ専門分野であるドクターが、クリニック開業のご相談に来られ、高名な医師でありながらも、厳しい経営状況が続いている状態を見て、ご自身の開業も難しいのではないかと悩んでいたことがあります。

実はその逆で、専門の分野で権威と言われる医師であるほど、独立起業してクリニックを開業したとしても厳しいのです。その理由をご説明いたします。

専門性が高く権威のある医師ほどクリニック経営が難しい理由

専門分野で権威のある高名な医師は、その知名度を利用することで「独立起業してクリニック経営をするとうまくいくのではないか?」と思われがちですが、そうではありません。

専門性が高く権威のある医師ほど、開業で失敗しやすい罠に陥りやすい状態にあります。その理由を3点ご紹介いたします。

理由その1、集患が思ったほどできない

集患が思ったほどできない

病院に勤めているときに、「専門分野の権威であることから集患に困らない」と考えてしまう事です。集患に困っていないのであれば、一見すると「独立して成功する要因ではないか?」と思われるでしょうが、そうではありません。

世の中には治療することが難しい多くの病気がありますが、そうした病気の治療を専門とする医療機関や医師を頼りにして、全国各地から患者さんが治療を受けに来るということもあります。患者さんから頼りにされるということは、とても良いことだと思います。

医師は、勤務医であっても責任感を感じて、忙しく毎日働いています。そうした日常を長い間続けていると、「自分が身を粉にして患者さんの治療のために一生懸命に働いていても、病院の経営者に利益が行くだけだ」と感じ、やりがいをなくしてしまうことがあります。

そこで、勤務している病院を離れて開業するのですが、開業時は「多くの患者さんがついてきてくれるだろう」と思っても、結果的にはあまり多くの患者さんがついてこなかったということがよくあります。

この理由は、病院のブランド力で通院している患者さんがいるにも関わらず、「自分の力で患者さんがきているのだ」と勘違いしていることです。病院に勤めて、次から次へと患者さんが来院されると、そういった勘違いをするものなのです。

そして独立したとき、予想して居た売り上げが上がらずに、クリニックの経営が厳しくなってしまうと言う結果を招いてしまいます。

理由その2、たくさんの設備投資をしてしまう

たくさんの設備投資をしてしまう

専門性が高く高名な医師ほど、クリニックを開業するときに必要な設備投資を積み上げ式で積算してしまい、たくさんの借金を背負ってしまう事です。

何事につけ、専門の領域で高名であり権威と呼ばれるほどの医師は、仕事の結果を最高のものとするための投資を惜しまずに行う傾向があります。必要な施設と設備また人員を確保することで、治療の成果をより良いものとすることに専念します。

ただし、これは勤務している病院の経営者がどこかで採算を合わせて経営を成り立たせているから出来ている事なのです。医師としてのスキルが一流であったとしても、病院経営には素人同然であることは否めません。

そこで、ご自身がクリニックを開業する場合にも必要な施設・設備をこれまでの勤務先と同じように求めてしまうことから、開業の設備投資に要する資金が増大して、多額の借入金を背負うことになってしまいます。

もちろん、その借金は黒字経営をして返済していかなければなりません。そのために、設備投資をたくさんしようとする医師ほど高い経営スキルが求められるのです。

理由その3、初めから多くのスタッフを雇用してしまう

初めから多くのスタッフを雇用してしまう

3つ目の理由として、初めから多くのスタッフを雇用することで赤字経営を始めてしまうことです。

設備投資の理由と同じく、設備を扱える人員を確保しようとすると、患者さんが少なくても多くの人員を雇用することになります。そうすると、売上げの割に人件費が高くなり、赤字経営の基礎を作ってしまうことになります。

クリニックが赤字になる最大の原因は、個人経営のクリニックにも関わらず、事務長などの管理職まで雇用してしまうことです。

多くのスタッフさんを雇用する病院の場合には、事務長には管理職としての大きな役割があります。

ところがスタッフが5人程度の個人経営のクリニックで管理職を雇用するということは、その分だけ余計に人件費が増大します。

どのような事業計画を立てるべきか?

どのような事業計画を立てるべきか?

このように開業計画を策定する場合には、必要とする施設や設備・人員を積み上げるのではなく、想定する売り上げで経営が成り立つようなミニマムな事業計画を立てること。これが開業成功の秘訣です。

開業をお考えで「手持ちの資金がほとんど無い」という先生は当たり前ですが、専門分野の権威で高名で資金も潤沢にあったとしても、できる限りミニマムな開業で黒字を出し、状況を見ながら少しずつ設備投資していくこととお勧めします。

特に女性医師で、子育てと仕事を両立させたい方は、この方法での開業が大切です。子育てと仕事を両立させるワークライフバランスを考えた開業方法は、「女医のキャリアと家庭や子育てのワークライフバランス新提案」をご覧ください。

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