クリニック開業物件を選ぶときのチェックポイント
前回は開業をする際におさえていただきたい「開業の心構え」をご紹介しました。
そして、実際に開業をしようと決めた後に検討すべきことは、開業の場所・資金・タイミングです。
今回はその中で、クリニックの開業場所である「物件」のチェックポイントについてご説明したいと思います。
物件を知るための3つの基本
開業をする場合、物件の選定にはいくつかパターンがあると思います。
ご自宅の改装やご両親の継承物件などの例もありますが、ここでは現実的に多くの先生方の開業場所となる、テナント物件についてのご説明をします。
物件を選ぶ際には、3つの観点が必要です。
「ソフト面」、「ハード面」、そして「契約関係」の3つです。
それぞれクリニックの開業準備、開業後の経営などに全て関わってきますのでしっかりとチェックする必要があります。
もちろん全てが100点満点の物件というのはありませんので、それぞれの長所・短所を把握しながら、最良の物件を選んでいくことになります。
では、それぞれ説明していきましょう。
ソフト面:「集患のポテンシャルを見極める」
物件のソフト面とは、マーケティングに関することです。
つまりその場所の集客(集患)力の側面です。
良い物件かどうかは、簡単に言えば患者さんが来院してもらえる場所かどうかで決まります。
良い立地では多くの人がその場所の前を通ります。
コンビニなどと同じですが、毎日同じ場所を通ることで、人々は「あそこにクリニック(~科)がある」と刷り込まれて行くことになるのです。
物件の立地は単に住所だけでなく、周りの状況にも注意が必要です。
例えば同じ住所でも表通りと裏通りどちらに面しているかで、人の通りが全く違ってきます。
フロア階については、一般的に人の視界から考えると3階までが適しています。
もちろん1階が一番良いことは確かですが、家賃は高くなります。
逆に3階であっても看板を見やすい場所に出すことで、1階と来院数があまり大差がないこともあり、家賃のコストとの関係を考えると3階にした方が良いというケースも多くあります。
家賃については、保証金(預り金)の違いはありますが、大まかに言って坪あたり1~2万円位までが適切でしょう。
それ以上はブランド街など、クリニックには適さない場所であることがほとんどです。
立地と家賃とのバランス、想定される患者数を考えながら、経営が成り立つのかどうかを確認することがソフト面の重要なポイントです。
ハード面:「クリニックの工事を始めてからでは手遅れになることも」
ハード面は主にクリニックの工事に支障がないかがポイントになります。
一歩間違えると取り返しのつかない事になりますのでしっかりとチェックしなければなりません。
いくつかここでご紹介します。
電力量
小規模なビルは通常50KVA(電気の容量)の設計になっていますが、例えばレントゲン装置を入れると、約30KVAの容量がかかってしまいます。
つまりたった1つの医療機器だけで、そのビルの6割の電力を消費してしまうことになります。
この場合、電力を増やす工事が必要となりますが、その為に数100万円余分にかかってしまう場合も有ります。
開院時に予想外の出費が生じると、運転資金を圧迫して経営を危うくする事にもなります。
機器メーカーの営業は、機器の導入に際しては、十分な電力があるという前提で話を進めてきますので、あらかじめ確認しておく事が必要です。
給排水
比較的大きなビルでは、トイレは共有場所にしかない場合があります。
その場合、クリニック内にトイレも流しも設置できない事になりますので、クリニックの運営そのものが不可能になってしまいます。
空調
クリニックは診察室など部屋をいくつかに区画するので、各室に空調を新たに追加する事になります。
その場合、エアコンと室外機をつなぐ冷媒管の配管や、室外機の置き場所など、ビルによって様々な制約を受ける事がありますが、それらは工事のコストを増やす要因になります。
こうした問題を解決しておかないと、クリニックの開業自体ができなくなることもありますので、抜かりなく確認することが必要です。
大家さんとの交渉のポイント
ソフト、ハード面をチェックしながら、最終的には大家さんとの契約が必要になります。
最近は不景気であることもあって、テナントは借りやすくなっています。
またある程度、条件の交渉もすることができます。
ただし大家さんの収入源である家賃を安くするための交渉は、経験上ほどほどにした方が良いと思います。
その代わり、オープンまでは家賃を無料にしてもらったり、保証金(預り金)を安くしてもらったりするなどの余地はあります。
大家さんとの交渉も、開業の初期投資を抑えるための1つの手段になりますので、しっかりと行っておきたいものです。