クリニック開業手続きの開設届けと保険医療機関の指定申請
クリニックを開業する場合、法的な根拠として開設届けが必要となります。クリニックを開業するときの申請には、次のものがあります。
- 開設届け
- 保険医療機関の指定申請
- 公費の申請
- 防火管理者等の消防署への申請
以下、これらの申請について解説いたします。
開設届とは?
これは、医療法によって決められていることなのですが、医院を開設してその場所で医療行為を行う場合には、開設してから10日以内に、所轄の保健所に、開設の届出をしなくてはなりません。
開設届けは、都道府県知事に対して提出されるものなので、その書式や手順などは県により若干の違いがあります。
ここでは東京都の場合を例にとってご説明しましょう。
(1)開設届の完了まで
1、事前相談
個人の開業は届け出制なので、法的な問題がなければ、原則として、開業した後10日以内に、保健所に開設届けの書類を提出すれば、それで済んでしまいます。
但し、役所の手続きというのはそんなに甘くありません。
事前に書類の内容を十分に確認しておかないと、保健所に何度も足を運ぶことになり、保険指定を受ける為の、締切に間に合わなって、予定の期日に開業できなくなってしまうと言う場合もあります。
*建築計画の確認
平面計画が出来て、工事に掛かる前には必ず図面を持参して、各室の用途と構造などに関して承認を得ておくことが必要です。
これを怠ると、完成した後に造り直しや改造をするとか、極端な場合には開設自体が認められなくなる恐れもありますので、内装工事も建築に掛かる前に必ず確認して下さい。
*名称の確認
次に、クリニックの名称に関してですが、院長先生のお名前かその土地の名称を付ける場合は良いのですが、大げさな名称や医療内容が優れているような事を連想させるような名称は好ましくない、と言われますので、名称に関しても確認が必要です。
*標榜科目の確認
同様に、標榜する診療科目に関しても、医療法に規定された科目を申請する必要がありますので、こちらも確認して下さい。
2、開設届け
医療行為を行うためには、医療法に則ったクリニックの施設設備を整えて、所轄の保健所に開設届けを提出しなくてはなりません。
この場合、届出をすればよいと言うことになっておりますので、法令に違反するようなことがなければ、直ちに医療行為を行うことは可能となります。
開設届けには様々な添付書類が必要となり、建築の計画図面もその1つですが、クリニックの建築や内装工事を行う前には、図面の段階で事前に計画の承認を得ておく必要があります。
これを怠ると、届出を出しても現地調査の結果法令に違反するカ所があれば、保健所からの改善命令が出て工事のやり直しをせざるを得なくなります。
この段階でトラブルが怒ると、開業日程自体が狂ってしまい、多大な損失を生じることになりますので、計画段階での事前協議は必須の物と言えます。
また、東京都の場合には、テナント物件でも開業する建物の、確認申請番号の記載を要求されます。
古い建物の場合や、転売で所有者が替わった建物の場合などは、確認申請の書類ばかりでなく、建物自体の図面すらない場合もありますので、開設届けに必要な書類を整えることが出来ない場合もあり、不慣れな人が手続きを行うと、何度も保健所に足を運んでも開設届けが受理されない場合もあります。
こうなると、保険診療の許可申請も出来なくなり、始まる前から大きな赤字を出すことになってしまいます。
私共は、常に、事前協議を十分に行い、開設届けの受理がスムース行われるように、全ての準備を行います。
*確認申請の番号
一番問題となるのは、建物の確認申請番号の記載を求められる事です。
新築や、テナント物件などで開設する場合にも、比較的新しい建物や管理のしっかりしているテナントビルなどでは問題がないのですが、古い建物や個人の所有しているテナントビルなどの場合には、確認申請の書類自体がなくなっている場合がありますので、契約の際に良く注意して下さい。
*敷地の用途指定
確認申請の書類があれば、そこに記載されているので問題は無いのですが、開業する場所の敷地の用途指定や防火指定も記載する欄がありますので、予め確認しておく必要があります。
*建物の構造概要
テナントビルなどの場合、入居する部分だけでなく、建物全体の構造や、建築面積・延べ床面積を記載する欄がありますので、こちらも合わせて確認しておく必要があります。
3、添付書類
*履歴書
大学卒業から開業までの職歴を記載します。
ここで注意しなくてはならないことは、経歴に連続性があるように記載することです。
職歴などにブランクの時期があれば、その期間の説明を記載しておく必要があります。
また最近では、履歴書に顔写真を添付することが求められますので、事前に準備して下さい。
*医師免許証の写し
普段は使わないものですので、何処にしまったかわからなくなっている先生も多いかと思いますが、開設届けを提出する際には、保健所で原本の提示が求められますので、改めて原本を確認して、添付資料としてコピーを取って下さい。
*賃貸借契約書
土地又は建物を賃借して開業する場合、賃貸借契約書の写しが必要となります。
こちらも開設届けの際には、保健所で原本の提示が必要となりますので、忘れないようにして下さい。
*土地建物の登記簿謄本
登記所に行けば誰でも取れますが、テナント開業の場合には、契約時に仲介業者に取り寄せてもらう方が良いでしょう。
*敷地の平面図
建物の敷地の図面と、そこに配置されている建物の配置図が記載されたものが必要です。
*敷地周辺の見取り図
クリニックの敷地の周辺の案内図となります。
*建物の平面図
クリニックの平面計画図です。
50分の1程度の詳細図を添付して、クリニックのレイアウトと、各室の室名が記載されていることが必要です。
*案内図
駅などからクリニックへ案内するような、広域の中でクリニックの位置を案内をする
図面となります。
4、X線装置の設置届け
X線装置を設置する場合には、設置届けと漏洩検査済み証が必要となります。
この場合、開設届けの書類にも、X線装置の機種と、X線室の面積や防護の構造なども記載しなくてはなりません。
この書類は、X線装置を購入有する業者さんに作製してもらうことが出来ますので、お任せして大丈夫です。
ここで、良く忘れがちなことは、取扱者の被爆測定器具の準備と、防護衣などの用意です。
被爆測定には、ルクセルバッジなどの申し込みをしておかなくてはなりません。
(2)開設届けの提出と現地調査
*現地調査
現地調査のポイントは、申請した建築図面と実際の現場に相違がないかどうか、確認することに有ります。
X線装置の届出をした場合には、保健所の放射線技師も現地調査に同行します。
各部屋には、申請した図面に記載した用途と同じ室名のサインを取り付ける必要があります。
また、医療法に定められた院内表示も必要となります。
これは、クリニックの診療時間・診療科目・休診日・管理者の氏名等を記載して、患者さんによく見える場所に表示しておくものです。
(3)保険医療機関の指定申請
保険診療を行う為には、保健所に提出した開設届けの副本又は、県によっては受理証など、保健所が確かに届出を受け付けたという証拠を持って、保険診療を行うための許可を受けなくてはなりません。
保険医療機関の指定申請とは?
保険医療機関の指定申請とは、保険診療を行うための許可です。
クリニックを開業するためには、個人経営のクリニックの場合は、役所に申請するだけで医療行為ができるようになります。その申請だけでは、患者さんはあくまでも自費診療になります。美容整形やオール自費の歯医者であれば、届出だけですぐに開業して診療ができます。
ほとんどのクリニックは、保険診療を行うクリニックを開業することでしょう。そのためには、保険医療機関の指定申請が必要となります。
保険証を持つ人は、保険料の支払いをしているわけですが、その保険料を集める国保連合会などの機関があり、クリニックにて保険診療を受けた場合、その機関が診療費の多くを負担してくれます。保険診療ができるようになるためには、国が認めた保険医療機関になる必要があります。その許可申請が、保険医療機関の指定申請です。
以前は、各都道府県の社会保険局が、その受付窓口となっていたのですが、平成20年からは厚生労働省が所管する厚生局に所管が移されました。申請手続きの締め切り日は、各県により若干異なりますが、許可の指定に当たっては毎月1日付けとなりました。
従って、前月の締め切り日までに申請書類を提出して、翌月1日付けで保険診療を開始することが出来るので、万一、締め切り日までに書類の提出が間に合わないと、予定した開院が1カ月先延ばしになってしまうことになります。
各種の施設基準なども厚生局が所管する事になりましたので、この手続きも同時に進行させなくてはならないのですが、1日付けの算定開始を希望する場合には、原則として、当日1日に書類提出を行わなくてはならなくなりました。
私共は、厚生局への手続きに関しても、事前協議を十分に行い、指定申請の許可がスムース行われるように、全ての準備を行います。
1、申請書類
*保険医療機関誌邸申請書
*指定申請に係わる連絡票
*保険医療機関添付書類
申請に必要な書類は、厚生局のホームページからダウンロードする事が出来ます。
提出は、各1部ですが、開設届けの控えのコピーと、医師免許証の写し、保険医登録票の写しを添付する事が求められます。
2、施設基準
保険医療機関の指定に伴い、各種の施設基準を届け出ることが出来ます。
代表的なものとしては、電子化加算・夜間早朝加算等ですが、施設基準は多岐にわたりますので、適合しているものを選んで届出る必要があります。
(4)公費の申請
各種の公費を扱う医療機関の指定を受けようとする場合、原則として保険医療機関の指定を受けて、クリニックの医療機関コードが発行されてからの申請となります。
(5)消防署への申請
クリニックを開業するためには、消防署への申請が必要です。その中の一つとして、防火管理者の申請があります。防火管理者は、講習を受けることも必須となっています。
クリニックの新規開設に伴う、役所関係の手続きとそのポイントを一通りご説明致しました。
各所轄の窓口との事前協議によって、作成する書類と提出するタイミングを良く確認して実行することが、無駄のない開業を実現する大きなポイントとなります。