患者数が減少して経営難になるクリニックの原因と対策

患者数が減少して経営難になるクリニックの原因と対策

クリニックが経営難に陥ったり倒産したりする主な理由は、患者さんの数が減少したために、クリニックの売上高が損益分岐点を下回ってしまうことです。

利益を内部留保していていたり、手持ちの運転資金がたくさんあったり、資金調達ができたりすれば、患者さんの数を回復させるための施策が打てるかもしれませんが、運転資金が底をついてしまったらお手上げです。

クリニックにたくさんの患者さんが来てくれていたとしても、ある時から急に患者さんの数が減ってくることもあります。患者さんの数が減っていってしまうパターンは、主に次のようなパターンがあります。

  • ● 地域の人口構成の変化
  • ● 競合クリニックの出現
  • ● クリニックの診療内容の陳腐化

これら3つのパターンを解説するので、これから開業しようとお考えの先生は、開業前に作成する事業計画では、どのようなことを考慮しないといけないのかを理解していただけたらと思います。

また、これからクリニックを開業しようとされる先生は、以下に説明することをも考慮して、トータルで堅実な支援ができる開業コンサルタントに依頼することも大切です。開業後に失敗しない開業支援なら、当社にお任せください。

地域の人口構成の変化による患者減少

地域の人口構成の変化による患者減少

人口構成とは、クリニックの診療圏内にどのような年代層の人が多く住んでいるのか、どのようなニーズが多くあるのか、そういった近隣に住んでいる住民の構成です。

クリニックの診療圏内に住んでいる人たちは、毎年年齢が1つずつ上がっていきます。すると、今まで多くの需要があった診療科目であったとしても、長い時間の経過によって少しずつですが需要が減っていき、今までとは異なる診療科目の需要が増えていくことがあります。

例えば、「産婦人科クリニックを開業したい」と考えた医師がいたとしましょう。クリニックの開業場所には、ニューファミリーの多い新興住宅の近くを選ぶことが多いと思います。しかし、子どもが生まれ育っていくと、次に小児科クリニックや皮膚科、歯科の需要が増えます。さらに何十年か後には、高齢者に対応する内科や在宅医療の需要が増えていきます。

このように、地域の人口構成が変化していって、地域で必要とされる診療科目が変化していくと、当初はたくさんの患者さんで賑わっていたクリニックでも、少しずつ患者さんが減ってしまうパターンもあるのです。しかも、人口構成の変化はゆっくりであったとしても確実に起こります。

このような患者さんの増減を考慮して開業場所を選び、地域住民のニーズが変化してきたときに、クリニックをどのように変化させていくのか、どのような診療科目を取り入れていくのかを考慮しておくことも大切です。

競合クリニックの出現による患者減少

競合クリニックの出現による患者減少

今現在、日本全国で歯科クリニックがたくさん存在し、コンビニの数よりも多いようです。東京23区内では、精神科クリニックなどが増加している状況もあります。

同じ診療科目のクリニックの数が増えても経営が成り立ちやすい診療科目もありますが、そうでもない診療科目もあります。それは開業場所によっても異なります。

もし同じ診療科目のクリニックが新規オープンしたら?

子供の多い地域であれば、小児科クリニックが2つくらいあっても良いと思いますが、子供が少なくなってきたら小児科クリニックが1つでも生き残りにくくなってくる場合もあります。

「小児科クリニックは当院が以前から開業しているから、他の人は参入してくることは無い」と考えていたとしても、同じ診療科目のクリニックが診療圏内に開業してくることもあります。すると、以前から繁盛しているからという理由で何もしないでいると、経営難に陥る可能性もあります。

例えば、とある地域に経営がギリギリまかなえている小児科クリニックが1つあったとしましょう。その近くに別の小児科クリニックが参入してきたら、患者さんの取り合いになり、どちらか1つが倒産することになりかねません。

わざわざ同業の近くに開業しようとする先生もいる

クリニックの開業場所が集患にとってとても大切なことは、「開業後に患者が来ないクリニックの原因と対策」といったコラムでもお伝えしていますが、医師によってはご自身の診療科目と同じクリニックが近くにあるのにもかかわらず、その付近で開業しようとする人もいます。「競合クリニックが儲かっているように思うから、自分も儲かるのではないかと思った。」と安易な理由で開業場所を選ぶ先生もいます。

クリニックを開業したいと考えたら、開業コンサルタントに支援を依頼すると思います。依頼した開業コンサルタントが、開業させることだけを目的としている人だった場合、「そのような場所で開業してはいけません」とアドバイスしませんので、ご注意ください。

また、開業コンサルタントによっては、先生のクリニック以外にも診療圏内に同じ診療科目のクリニックを同時に開業させようとするも者もいます。そのような、自分の業績のことしか考えない開業コンサルタントに依頼したら、後で経営難に陥る可能性があります。

生き残るクリニックの要因

先ほどの経営がギリギリの地域で、別の小児科クリニックが開業したときの例では、どちらか1つのクリニックが生き残る可能性があるわけですが、どちらが生き残るのかは、さまざまな要因によって決まります。その要因は、次のようなものです

  • ● クリニックの開業場所の目立ちやすさ、看板の目立ちやすさ
  • ● 先生の人気、口コミ
  • ● SNSでの評判
  • ● クリニックの利用のしやすさ
  • ● 資金繰りの良し悪し(固定費の高さや運転資金のレベル)

これらの総合点で勝っているところが生き残り、劣っている方が倒産します。ここで大事なことは、もちろん集患ができた方が生き残るということです。

クリニック経営はコンビニ経営と似ている

クリニック経営はコンビニ経営と似ている

このような競争は、コンビニの経営と似たようなところがあります。例えば、ある場所に弱小コンビニが1つあったとします。別の大手コンビニが「その地域に需要がある」と判断していたら、空き物件が近くに出たらすぐに出店するわけです。大手のコンビニは、立地条件の良い場所にすぐに出店してきます。

先に出店していた弱小のコンビニは、大手のコンビニにお客様を取られて売上を大幅にダウンさせ、経営難になって閉店せざるを得なくなってしまいます。

幹線道路沿いのコンビニでは、駐車場が広いことが集客の条件になります。幹線道路沿いに駐車場の狭いコンビニを開いても、利用者が利用しにくいので、売上が伸びないはずです。

クリニックも同様です。経営に強いクリニックや利用しやすいクリニックが生き残っていきます。

例えば、ご自身が小児科クリニックを開業していたとしましょう。近所には子育て世代が多く住んでいて繁盛していたとしましょう。ところが、そのクリニックの駐輪スペースが狭く、患者さんのニーズに応えられていなかったとします。新しくオープンした小児科クリニックが広い駐輪場スペースを備えていたら、患者さんの多くが新しい小児科クリニックを利用するようになるかもしれません。

また例えば、ご自身がクリニックを開業していたとして。近所に新規開院したクリニックが、自分のクリニックと同じ診療科目であったとしても、顧客対象となる患者さんのニーズが異なっていたら共存も可能になります。皮膚科クリニックが2件あり、1つが保険診療専門、もう1つが美容などの自費診療専門であれば共存は可能となります。

コンビニの多くは、品質やラインナップに差があるとしても、同じような商品やサービスを提供しているので、顧客の奪い合いをしていますが、クリニックの場合は同じ診療科目であったとしても診療の内容によって差別化ができます。

もし新規クリニックが開院する情報をつかんだら、その競合クリニックがどういったものなのか、出店してきた医師が何を考えているのか、地域の患者さんがどのように自院や競合のクリニック、先生のことを思っているのかなどを検討しながら、クリニックの運営方針を考えなければなりません。場合によっては、生き残りのために診療機器の充実化や全面リフォームといった大幅な方針の転換も視野に入れることも必要です。

地域の患者さんから求められるクリニックを目指すポイントは?

どちらにしても、地域の患者さんたちから求められるクリニック、地域の人たちのニーズを満たすクリニックが生き残ることは確かです。

どうしたら地域の人たちから求められるクリニックになるのか。それは、先生の医療技術が的確であるということはもちろんですが、それに加えて先生の親しみやすさもポイントとなります。これからクリニックを開業しようとしている先生は、淡々と医療行為を行うだけの医師を目指すのではなく、患者さんとしっかりコミュニケーションを取り、患者さんの話をよく聞いてあげて、気遣いができるような診療を目指すことが望ましいです。

地域の人たちとのつながりができたら、地域に愛される開業医になり、クリニックに多くの患者さんが来てくださるようになります。

クリニックの診療技術の陳腐化による患者減少

クリニックの診療技術の陳腐化による患者減少

クリニックの診療技術が陳腐化して、患者さんが減っていくパターンもあります。例えば、歯科クリニックでは今やインプラントが当たり前となりました。また、眼科クリニックではレーシック手術が当たり前のように行われるようになりました。

そういった新時代の診療技術が当たり前のように取り入れられている時代では、以前までの診療だけをしていたら、患者さんを新規開業してきた競合クリニックに取られていってしまい、経営難になることもあります。

新しいものは何でも取り入れたらいいのか?

しかし、新しい診療技術は、すぐさまそれが広がることはありません。本当に少しずつ認知されていきます。また、「将来主流の診療技術になるかもしれない」と思われるものであっても、廃れていってしまうものもあります。

新しいもの好きで、新しい医療機器にすぐに飛びついて、コレクションするかのように導入する医師もいます。その医療機器による診療を求めて多くの患者さんが来れば良いのですが、使わなくなった医療機器のためにリース代や借金を払い続けるようなこともあります。

そういった積み重ねで、クリニックの経営が危なくなることもあります。

新しい診療技術を導入する前に考えること

新しい診療技術の導入は、調査研究やマーケットの分析を行い、学会などで情報を得ることから始めてください。

新しい診療技術が普及してくる前に、どのような新しい診療技術が出現してきているのか、その診療技術は先生のクリニックに必要なことなのか、それを導入したらご自身のクリニックが地域にどのように貢献できるのかといったことを考えて、導入を検討していくことが大切です。

闇雲に新しい診療技術を取り入れて、固定費を増やしてしまったにも関わらず、患者さんが来なくて、クリニックを経営難にしてしまう可能性もあります。

患者数が減少しても経営難になりにくいクリニックの開業方法

患者数が減少しても経営難になりにくいクリニックの開業方法

最後に、患者数が減少しても経営難になりにくいクリニックの開業方法を解説いたします。

患者数が少なくても黒字のクリニック経営ができる「ミニマム開業」をする

地域の人口分布の変化、競合クリニックの出現、クリニックの診療内容の陳腐化といった患者さんが減っていく原因について述べてきましたが、患者さんが減っても安定して利益の出るクリニックの開業方法があります。

それは、「ミニマム開業」と言われる開業方法です。

ミニマム開業とは簡単に述べるならば、小規模なテナントを借りて開業し、テナント料や人件費といった固定費を出来るだけ低く抑え、経営のリスクを減らしつつ、先生の手取りを大幅に増やす開業方法です。坪単価の高いテナントは集患がしやすい場所が多いですが、もちろんテナント料が高くなります。そこで、坪単価が高い場所で小規模なテナントを借りることです。すると、テナント料の総額を抑えつつ集患を獲得することができます。

また、時短開業にも適しているので、「子育ての時間を取りたい」とお考えの女医さんにもおすすめの開業方法です。

当社の開業コンサルティングは、患者さんが少なくても黒字経営ができるミニマム開業を推奨しています。ミニマム開業の詳しい解説は、「ミニマム開業とは?メリット・デメリット」をご覧ださい。

開業後の経営も考慮して開業支援をしてくれるコンサルタントに依頼する

開業後のことも考慮してクリニック開業を支援してくれるコンサルタントに依頼することが大切です。

開業コンサルタントによっては、「先生の希望を叶えてあげたい」と言って、大規模なテナントにたくさんの医療機器を導入する支援をする場合があります。そのような大規模な開業では、もちろん開業後の資金繰りや集患に苦労することが多いです。

そういった大規模な事業計画は、資金調達が難しくなるので、クリニックの内装工事を安く抑え様とする傾向があります。ところが内装工事を安く抑えたら、後の修繕で大きな金額がかかってしまうことがあります。

以前経験したことですが、ある先生が依頼した開業コンサルタントに不信感をいだき、当社にご相談いただいた事例をご紹介したいと思います。その先生が持ってきた内装工事の図面を見せてもらったところ、開業後に大幅な改修工事が必要となるような安易な設計でした。すぐさまその旨を指摘し、内装工事のスタートを止めて、難を逃れたケースもありました。

本当に正しくアドバイスができる開業コンサルタントなら、余裕を持った経営ができるように堅実な事業計画を立ててくれるはずです。

クリニック開業後の安定経営を目指すのであれば、多くの患者さんに利用してもらえるクリニックであることが大切です。そのためには、開業場所が大事です。さらには、開業後でも資金繰りで苦労しないように、なるべく固定費を抑えたミニマム開業をすることが大切です。

さらには、開業後の地域の人口分布の変化、競合クリニックの出現、クリニックの診療内容の陳腐化なども考慮してトータルでアドバイスしてくれる開業コンサルタントに支援を依頼することが何よりも大切です。

これから首都圏でクリニックを開業したいとお考えの先生や、経営リスクの低い開業をしたいとお考えの先生に向けて、30分~1時間無料のオンライン相談会を開催しています。無料相談会では、先生が抱えている開業の疑問や不安に対して、本音で何でもお答えいたします。

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