クリニック経営でスタッフに「辞めたい」と言われたら?
開業されてから順調にクリニック経営のスタートを切られたY先生から、お電話をいただきました。
クリニックのスタッフの1人が「急にやめる」と言いだしたのだそうです。
クリニックの医療事務の中心人物とされていたスタッフでしたし、突然のことで先生も困惑されていた様子でした。
このようなことはどこのクリニックでも起こりうることです。
今回は開業して避けて通ることのできない、職員の退職について取り上げたいと思います。
1人のスタッフの退職、そしてもう1人のスタッフも・・・
Y先生のクリニックで一体何が起こったのでしょうか?
後でわかった話ですが、辞めたいと言い出した医療事務の中心スタッフは、他の医療事務のスタッフに悪知恵を与えていたようです。
例えば彼女が中心となり、出勤の時間をごまかしていました。
一番早くクリニックに着いたスタッフが全員分のタイムカードを押し、一番最後に帰るスタッフが全員分を押して帰るといった行為が行われていたようです。
それ以外にもそのスタッフの言動が、他のスタッフに悪影響を与えていたことは容易に想像できます。
そして、もう1人のスタッフもそのあとに辞めるという事態になってしまいました。
最初に辞めると言いだしたスタッフは、他のクリニックに転職し、どうやら他のスタッフも引き抜いてしまったようです。
スタッフが辞める3つの理由
人を雇う時に決めておかなければならない条件があります。
「勤務時間」、「休日」、「給料」の3つです。
まずこれをしっかり決めているという前提でお話を進めます。
どの組織にも当てはまることですが、スタッフが辞める理由は3つあります。
1.給料・待遇に不満がある
2.仕事の内容に不満がある
3.人間関係に問題がある
今回のケースは1と2が原因なのではないかと考えています。
まず給料についてです。
今回のクリニックの開業において、医療事務経験者と未経験者を同時に採用しました。
あえて経験のある人ばかりを採用するのではなく、若いスタッフも入れて活気のあるクリニックにしようという意図でもあったのです。
一方で経験者のスタッフにとっては未経験者との給料の差があまりないことで、相対的に自分が「評価されていない」と感じていたのかもしれません。
仕事の内容については、クリニックという小さな組織ですので、医療事務以外にも看護助手や、クリニックの掃除のような仕事もやってもらわなければなりません。
今回辞めると言いだした彼女にとっては自分が過小評価され、やりたく無い仕事も指示されて、いいように使われていると感じてしまったのでしょう。
開業したばかりのクリニックですので、経営の見通しが立つまでは、最初から全てが満足のいく勤務条件にすることは難しいので、どうしようもないことでもあります。
忘れると大変!?クリニック開業準備の基本的な内容とは?をご覧ください。オクスアイでは開業直前準備としてスタッフの勤務の準備を行っています。
「辞めたい」と言われたらどうすべきか
まず初めに認識してもらいたいことがあります。
スタッフに「辞めたい」と言われたら、引き留めても「ムダ」です。
無理に引きとめたり、ケンカ別れのようになってしまうと、医療という狭い世界ですので、悪い評判を流されてしまう可能性も否定できません。
辞めたい人は早めに辞めてもらい、すぐに次の募集をかけるべきです。
常勤の人が決まらない場合は、パートにしても良いので少し多めに雇って、良い人の勤務時間を増やして行くというやり方も効果的でしょう。
通常、スタッフの試用期間は3ヶ月程度です。
仮に能力が不十分であると判断できれば、解雇予告を1ヶ月前に出して辞めてもらうか、解雇予告手当として1ヶ月分の給料を払い、即日解雇という方法があります。
厳しい決断かもしれませんが、患者さんにより良い医療サービスを提供することを最優先すべきですし、クリニック経営をスムーズに運営するためにも必要なことです。
人を雇う立場として
スタッフの方にもそれぞれの人生があります。
医療事務の場合女性が多いので、結婚や出産も含めて3~5年で辞めてしまうことが一般的です。
人は辞めて当然という考えを持ったほうがよいでしょう。
医療事務の経験者をしっかり教育して、クリニックに合った人材に変えようとするのもあまり現実的ではありません。
結局のところ、最適な人材にめぐり会うまで頑張るしかないというのが、クリニックのスタッフ採用で押さえておくべきポイントです。
一方で、スタッフに気持ち良く働いてもらうためには、クリニックの経営をオープンな状態にすることも非常に重要です。
良くある話ですが、レセプトや経理に関する情報を全く見せないようにしたりすることは、逆にスタッフの疑心暗鬼を生む結果になります。
開業当初は満足な給料水準にならないこともありますが、クリニックの来院患者数が増えたら、それを還元したりする仕組みづくりも大切です。