クリニック開業のメリット・デメリット

病院や診療所などに勤務する「勤務医」に対して、自ら診療所を経営する医師「開業医」になるには、大きな決断が必要です。

今回は、開業医のメリットとデメリットについて紹介します。
医院開業を検討している人は参考にしてみてください。

医院開業の最大のメリットは収入増大

勤務医と開業医ではこれほど差が出る!

医院開業で得られる最大のメリットに、収入の増大が挙げられます。
加えて、自分の裁量と診療スタイルで患者と向かい合えるという点も、開業のメリットです。

開業医の平均年収は2,500万

厚生労働省の統計によると、病院勤務医の平均年収が、1,479万円だったのに対して、開業医の場合は、平均2,500万円と約1.7倍の年収が報告されています。[注1]

公の統計で見た場合、勤務医と開業医の収入の格差は、自営業としての経営リスクを考えるとそう大きなものとは言えませんが、それぞれの年収の意味には大きな違いがあります。

勤務医の収入は、一般のサラリーマンと同様「給与」として支給されますが、開業医の場合は、給与では無くて、医院の売上げから必要経費を差し引いた収益である事を認識しておきましょう。

つまり、2,500万円の年収は、医院の売上げから家賃や人件費、薬品代や光熱費などの必要経費と、自家用車・交際費・その他諸々の生活費に類する費用も含めて経費として使った残りです。

これが、ご自身(院長)への報酬でありこれに所得税が課税されることになります。

もちろん、税法上は業務に必要な支出しか認められませんが、実態としてはかなりグレーゾーンと見なされる支出もあり、税務調査などで指摘されて修正申告をすることがあるのはご存じの通りです。

医院開業のために借り入れた元金、家族の生活費や旅行代、子供さんの学費や塾代などは経費にはなりませんので、相応の所得は申告して税金を支払う必要はあります。

[注1]「勤務医の給料」と「開業医の収支差額」について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/iryouhoushu.html

自分のやり方で理想の医師像に近づける

勤務医とは異なり、開業医は、自身が医院のトップになります。そのため自分の裁量、やり方で患者に向かい合えます。
勤務医はいわば、企業に勤めるサラリーマンのようなものです。
時には、会社としてのルールと自分の目指す姿との間で葛藤することもあるかもしれません。

対して開業医であれば、自分が思い描く治療法や患者への接し方などが実践でき、自分の理想に突き進んでいけます。
女性医師の場合、子育てや家族のケアをしながら、医師としての仕事を両立したいと希望して開業する例が多くなっています。

医院開業のデメリットは経営者としての仕事

開業医になるということは、医師であると同時に、経営者としての仕事もこなしていくと言うことです。
そのため、資金調達や経営の舵取りといった、勤務医時代にはなかった業務がのしかかるというデメリットも有ります。

開業資金を調達する必要がある

医院を開業するために必要となる資金は、大きく分けて二種類あります。

ひとつは、設備投資資金です。
文字どおり医院をオープンするのに必要な設備にかかる資金のことを指します。設備投資資金には、開業場所を借りるために必要な費用、内装工事や医療機器にかかる費用などが含まれます。

また、運転資金も必要です。
開業後すぐに軌道に乗るケースは稀で、通常、安定した収入が得られるようになるのは1年くらい先になります。
保険診療の収入は診療後2ヶ月先となりますので、開業してから半年間は手持ちの運転資金が減り続ける事を覚悟して下さい。

設備資金と運転資金を合わせて、最低でも5,000万円位は必要とされています。
先ずはこの開業資金の調達から始まります。

集患・増患に注力しなければならない

医院を開業したとしても、患者が来院しないことには、経営が立ち行きません。
そのため、集患・増患に繋がる、広告宣伝活動は大変重要となります。
広告宣伝は勤務医時代には必要のない事で有ったため、開業したての場合は、不慣れな為に煩わしい仕事に思えるかもしれません。

設備投資資金を抑えることで開業のデメリットを低減する

医院を開業するにあたり、自己資金も必要ですが、基本的には必要な資金を借り入れで用意する事になります。
しかし、ここで重要となるのが「いかに資金に余裕をもって開業できるかどうか」ということです。

経営が軌道に乗らず、廃業しなければならなくなるという最悪のケースを避けるためには、開業のリスクを低減することが大切となります。
そのためには、必要な設備投資をしながらも、運転資金に余裕を持っておく事が大切です。

テナント開業がコストカットに有効

開業場所を用意するのに必要な資金を抑えるには、テナント開業が有効となります。
昔は、開業にあたり自宅併設で建物を新築する場合が多かったのですが、それだけ費用がかさみます。
建物を新築する場合はテナント開業の3倍程度資金がかかるため、まずはテナント開業から始めることで資金が抑えられます。

また、医院の内装および外装に必要な資金も、小さめのテナントを選ぶことである程度抑えることが可能です。
はじめから坪数の大きいテナントを借りるのではなく、坪数を小さめ(30坪以下)にすることで家賃や内装工事費にかかる費用を抑える事が出来ます。
経営が軌道に乗りさえすれば、規模は後からいくらでも大きくできます。

無理のない資金計画で多くの患者さんを集めるような経営を

開業医になれば、自分の望むスタイルでの診療を実現できるだけでなく、勤務医時代よりも高い収入が得られます。
ですが、その為には経営者として事業を成功させなくてはなりません。

そのための第一歩として、医院開業にあたり、無理のない資金計画を立てることが成功のために重要となります。
医院開業では、運転資金に余裕を持って効果的な宣伝方法で患者さんを集めることが最大の課題となります。
資金計画や医院の経営方針で迷ったときは、コンサルティングサービスを利用することが問題解決の近道となります。

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